無施肥無農薬で栽培

・肥料・農薬は不使用

・手作業を重視した栽培方法

・自然の力を活かした土づくり

私たちは、自然の循環を尊重し、化学物質に頼らずに作物を育てています。

化学肥料はもちろん、一般的な有機肥料やたい肥も使用せず、田畑に生える雑草や、そこで育った野菜の残渣、稲わらなどを中心に土へ還しています。 これらは日常的に取り入れている自然の恵みであり、土の中の微生物がゆっくりと分解し、豊かな土を育ててくれます。

また、籾がら・米ぬか・油かすなどの素材は、必要なときにごく少量だけ補う程度です。 これらは即効性がある分、使いすぎると土のバランスを崩すことがあるため、自然の力を損なわない範囲で慎重に使うよう心がけています。

その土地で採れたものを、その土地に返す――。 そんな持続可能な「無施肥無農薬」栽培を通して、自然の力を生かした、環境にやさしい農業を目指しています。

私たちが育てるお米も、肥料や農薬を一切使わず、 稲が本来持つ生命力を引き出すように心がけています。 土と向き合い、季節の移ろいとともに自然のリズムで育つお米です。



米づくりを始めたきっかけ

もともと父が育てたお米を使って、お菓子を製造・販売していました。しかし三年前、高齢になった父が「もうお米づくりをやめよう」と言ったとき、父の作る無農薬のお米にこだわってきた私は、「それならお菓子づくりをやめて、自分たちでお米を作ってみては・・・」と考えました。

大阪でどうやって始めればいいのか、いきなり移住するのも難しい。悩んでいたとき、以前見学させていただいた赤目自然農塾のことを思い出しました。

最初は気乗りしなかった夫を、「アウトドアだよ」「帰りに温泉に寄れるよ」と誘い、遊び感覚で通い始めたのがきっかけです。気づけば今では三年目になりました。

私たちは農業の経験がまったくない素人。赤目で教えてもらう自然農の米づくりや野菜づくりに、心を動かされました。

「トラクターやコンバインがなくてもお米は作れる」そのことを知ったとき、目の前がぱっと明るくなった気がしました。作れる量は少なくても、鍬や鎌、スコップなど身近な道具でできる。そのことが嬉しくて、通い続けるうちにどんどん夢中になっていきました。

佐賀での挑戦

一年学んだあと、思いきって佐賀に田んぼを借りてみることにしました。翌年からは赤目で学びながら月に一度佐賀に通い、学んだことを復習するような気持ちで田んぼに立ちました。

赤目と佐賀では、気候も土の質も、草も水もすべてが違います。その違いに戸惑いながらも、試行錯誤を重ねました。

初めての収穫では、赤米15kg、うるち米7kg。うるち米の収穫時期を私の都合で遅らせてしまい、多くの稲穂から米が落ち、さらに天日干し中にはスズメにもたくさん食べられました。

それでも、一年かけて遠くまで通って得たお米は、悔しさよりも「やっとここまで来た」という喜びのほうが大きかったです。

二年目のリベンジ

「もう一度リベンジしよう」と決め、今年はうるち米のみで再挑戦しました。さらに、佐賀で空いていたもう一枚の田んぼを借り、そこでは三反の広さで機械を使いながら量を増やすことにしました。

お米づくりを始めた頃は、父がやめたから、自分たちでやるしかないという思いでした。それは「お菓子を続けるため」ではなく、“お菓子をやめてでも、父が残した無農薬の米づくりを受け継ぎたかった” からです。

そして今、ようやく自分たちの手でお米を作れるようになり、「このお米で、また何か商品を作ってみようか」と思えるようになりました。お米づくりが新しい原点になり、そこから商品つくりへもう一度つながっていく――そんな流れになってきています。

古民家を直して、野菜やお米を育てながら暮らしたい。そんな話を夫としていた頃には、まさか本格的に米づくりをするようになるなんて思いもしませんでした。自分たちも、家族も驚くほどの変化です。まだまだ手探りですが、少しずつ一人前に近づいていけたらと思っています。

これからの想い

お米づくりを始めて、あらためて自然と向き合う厳しさを知りました。
無農薬は難しくないと言っていた父の言葉の裏には、見えない努力がありました。
広い田んぼの中で、泥に足を取られながら雑草を抜く。
真夏の強い日差しを上からも水面からも受けながらの作業は、本当に大変でした。

それでも、歌いながらおしゃべりしながら作業をすると、不思議と楽しい時間にもなりました。
自分が無農薬で作っているからこそ出会える世界があり、そのひとつひとつにワクワクしました。

台風や大雨、虫や病気で一瞬にして終わってしまうこともある――。
それでも続けてこられた人たちは本当にすごいと思います。
私も自然農で学んだことをまた来年の米づくりに活かせると思うと、今から楽しみでなりません。

お米が好きで、米づくりに興味がある。
その気持ちを忘れず、これからも自然の力を感じながら、できることを一つずつ続けていきたいと思います。